縦断的研究(longitudinal method)と横断的研究(cross-sectional method)
縦断的研究は、実際に時間の流れにそって、例えば一月に1回、学習者に面接をするなどして調べたいデータを集める「縦断的」方法である。
横断的研究は、あるプログラムの1年生と2年生など、すでに異なったレベルにいる学習者群をいくつか選んで同時にデータを集める「横断的」方法である。
「縦断的」方法の学習者が異なる時点で示したデータの変化と、「横断的」方法の場合のそれぞれの学習者群が同時点で示したデータの違いが、同じように扱われるわけである。
これら二つの方法には、それぞれ以下のような長所、短所がある。通常、長期にわたる縦断的研究では、参加する学習者側の時間的・精神的な負担が大きい。そのため多人数に参加してもらうことが困難で、その結果、1人から4,5人のデータを研究対象とすることもある。そうなると、母語や適性などの個人的な要素の影響が大きくなり、得られた結果が一般的、普遍的であるとは言いにくいという難点が生じる。しかし、学習者の中間言語が実際に変化した様子を記録できるという利点は大きい。逆に横断的研究では、それぞれの個人の変化を追った結果ではない点が弱点である。しかし多くの人数のデータを集めることでその欠点を補い、結果の一般化をねらうことができる。理想的には多くの人数を長期間観察できればよいのだが、現実的には難しいので、縦断的方法と横断的方法を組み合わせて、例えば1年目の学生群と2年目の学生群を同時に1年間追い続ける、といった方法がとられることもある。そしてその結果を統合して、1年度のはじめから2年度の終りまでの習得の模様と考えて分析するのである。いずれの方法にしても、人数が多いほど説得力があることは間違えない。また、母語や年齢などの個人的背景に関しても、同じ条件の学習者が多いと、その条件内では結果を一般化しやすい。
参考文献
青木直子 尾崎明人 土岐哲「編」(2008) 『日本語教育学を学ぶ人のために』世界思想社 166-167.